店主の気まぐれ紹介スポット

鳥辰

菊水小路には、長くこの場所を見てきた店があります。鳥辰も、そのひとつです。創業は昭和12年。今も変わらず暖簾を出していて、この通りの空気を静かに支えてきた店だと思います。新しい店が増えても、こういう店がそこにいてくれると、街の景色はやはり落ち着きます。長く続いているというのは、それだけで十分に店の力なんでしょう。

焼き鳥は、気取らず、でもちゃんとおいしい。言葉にすると簡単ですが、その加減がいちばん難しいのかもしれません。鳥辰は、そういう当たり前をきちんと続けてきた店なんだろうと思います。レバーや昭和焼き、豚串のような定番にも店の仕事がきちんと出ていて、食べると素直にうまい。派手さで引っ張るのではなく、食べ終わったあとに「ああ、よかったな」と思える焼き鳥です。

それに、鳥辰は焼き鳥だけではなく、菊水小路の時間そのものを守ってきたようなところがあります。小さな店が並ぶこの通りで、昔から変わらず灯りがついている。そのこと自体が、もう十分にありがたいものです。古い店というのは、年数だけでは続きません。きちんとおいしいものを出して、また来ようと思ってもらう、その積み重ねがあってこそだと思います。

焼き鳥が食べたい夜に、こういう店を知っていると頼もしいものですし、菊水小路らしい空気を味わいたい方にも、鳥辰は自然におすすめできます。長い時間をかけてこの通りを支えてきた店として、素直に名前が挙がる一軒です。